トラブル時の対応でリピートの有無が決まる

先日、スキーのために某スキー場そばの宿に二泊してきました。その時にあったトラブルとその対処について考えさせられることがありました。

硫黄泉が自慢なのに源泉にトラブルが

私が泊ったのは、硫黄泉が自慢の宿の、さらにそのお湯をかけ流しで24時間使うことができるという半露天風呂付のお部屋でした。スキー場も目の前で、かなり広めのお部屋でしたし、口コミを見るとお食事などの評判も良いようで、2人一泊50,000円程度であれば比較的安いのではないかと感じました。

元々はスキー客向けの古い宿のようですが、近年になり少しずつ改装を重ねながら、客単価を高めていこうとしている様子が見られます。そのあたりの様子を拝見することも楽しみにしながら予約を取りました。

ところが到着すると「メールでお知らせした通り機器トラブルのため、硫黄泉は使えず単純泉になります」と伝えられました。私が見落としておりその時まで気が付かなかったのですが、前日に硫黄泉のトラブルについてのお知らせとともに、キャンセル料は無しに予約キャンセルできる旨のメールが届いていたのでした。

お話する中で、この宿だけではなく地域全体で使っている源泉をくみ上げるところにトラブルが発生していること、数日後に復旧工事の予定であるとのことをお聞きできました。

残念ながら期待していたお湯に入ることはできそうにありません。

トラブルにどう対応するか

今回のトラブルに関しては、宿の方の責任でないことはよく理解ができますが、顧客側の責任でないことも事実です。

こういった突発的な事態で、本来であれば提供できるはずのものが提供できなかった場合、一般的にはサービス提供側が代替手段を申し出ることが多いと思われます。私もこれまで、大なり小なり様々なトラブルに出会ったことがありますが、サービス提供者側がなんらかの補填(気持ち程度であっても)を提供されていました。

今回の宿はそれらの提案が一切ありませんでした。「ご迷惑をおかけしておりますので、ほんの気持ちではありますが、お食事の際のお飲み物を一杯サービスいたします」でも、「次回ご利用いただける割引券を」でも、「お土産に〇〇をご用意しました」でも、なんでも良いのでご提案が一つあればこちらも気持ちが休まっただろうと思います。

「ご迷惑おかけして申し訳ありません」という言葉も、こちらの気持ちに寄り添うものではなく、「自分たちは悪くない」「キャンセルしても良いというメールは送った」という意識が透けて見えるものだったのも残念でした。

価格帯によって求められるサービスレベルは異なる

ただ宿の立場で考えると、冒頭に記したように、かけ流しの温泉が付いているお部屋にしてはリーズナブルな価格であったことは事実で、その値段でできるサービスレベルはこれが限界、という事なのかもしれません。

実際、お湯の温度管理も適切に行われていないようで、その辺りにもこの価格帯の限界が見えた気がします。まだまだ「古くからのスキー宿」から「高級(?)温泉宿」への脱却ができておらず、「温泉のついている部屋」というモノ売りの意識なのだろうと感じました。

高価格帯の「温泉宿」になるには「心地よくくつろぐ時間」を提供するコト売りへと意識を変革しなければなりません。滞在中のお客様に、常に心地よくいていただくことに注力していれば、お客様が何を求めて来訪し、どんなことを望んでいるかも見えてくるはずです。

温泉付きのお部屋を希望するお客様は、いつでも自分の好きなタイミングで温泉に入れることを望んでいるわけですから、自分で何十分もの時間をかけて温度調整しなければお風呂に入れないことがストレスになること、お客様が「欲しい」と思っている時間ではないことは自明の理です。

お食事終わりの際の声掛けも無く、チェックアウト時に「またぜひお越しください」という言葉も無いなど、細かいことも重なりましたので、普通にお湯が出ていたとしてもリピートしたいとは思わなかったかもしれません。

宿を選ぶ側の意識

ホームページや口コミを見る限りでは、モノ売りからコト売りへとビジネスを変えていこうと努力されているように私には見えました。しかし、価格がついてきていないことにもう少し注目して、選択することが必要だったかもしれません。

もちろん、何のトラブルもなければ「お得に泊まれたね」と多少のことには目をつぶって満足したのかもしれないですが、何かあったときにはやはり後々の印象が大きく変わってしまいます。

今回はスキーがメインの旅で、多少の失敗も許される宿選択だったのでことなきを得ましたが、これが例えば「一生に一度」のような計画だったとすると、とても納得できることではないはずです。

消費者側もそういった意味で「相場観」を養いながら、価格に比して本当に良いサービスを提供してくれている宿やお店には感謝を込めて応援リピートをすることが大事だと改めて感じました。

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